BabeL 〜MODEL DD101~(EX)の考察

1.はじめに

 BabeL 〜MODEL DD101~(EX)(以下白バベル)は、全国のポップン愛好家に親しまれている大人気譜面である。遠征したらまず判定合わせに白バベル、少しギャラリーができたら白バベル、今日はちょっといい形の餃子が作れたから白バベルといったように、様々なシチュエーションで選曲されている。その人気のあまり本物の白バベルが建立されるほどだ。

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大阪にあるらしい

  今回はこの白バベルの人気の秘訣を、譜面を味わいながら考察していく。

 

2.13小節目

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 開幕から判定など合わせる暇もない激しい左右振りが襲う。こういう譜面は体調がいい日にたまにやるものだ、1クレ1曲目に選ぶ譜面ではなかったと後悔させる。

 ひとしきり階段をまき散らした後に降ってくるこの配置。ゲームオーバーしてしまったかのような曲調で我々を恐怖に陥れ、ここから始まるマイレボリューションへの展望をまっ黒に染め上げる。

 しかしちょっと待ってほしい。この配置に見覚えはないだろうか。

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 さかさまにすると、そう。

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 絶好の駐車スペースになるのだ。

 これなら遠征しても安心である。車で訪れたはいいものの駐車場がない、もしくは狭くて停めるのが難しいといった経験はないだろうか。特に地方の小さなゲームセンターは駐車場も狭めである。私も元ホーム(現在は閉店済)で何度か柱に車の後ろをぶつけ、店員に謝りに行ったことがある。思い切りドアをこすりつけ、もう丸ごと買い替えた方が安いのではないかと思うほど大きな傷を付けながら走り去る車を目撃したこともある。行き慣れた私だったからいいものの、これがわざわざ首都高速中央環状線を突破してきた遠征組だったらどのような反応をしていただろうか。「このゲーセンの駐車場トイコンよりむずい」「なんで常時左右プレスかかってるんだよあそこ」「低速の地力が通用しない」と話題を持っていかれること間違いなしだ。このような事態は本望ではないだろう。

 それを解消してくれるのがこの駐車場。画像では試しにセダンを3台停めてみたがいい感じである。地方に遠征に来たプレイヤーはまず、駐車スペース確保のために白バベルを選曲してみてほしい。車の悩みが無くなり快適なポップンライフを過ごすことができる。

 

3.40小節目

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 体が温まり始めたころ降ってくるこの同時押し。赤をどちらの手で拾っていいのか分からずポロポロこぼすプレイヤーは後を絶たない。ギャラリー受けがよさそうな配置ではあるが、これを捌き切るには相当の腕前が必要になる。

 しかしちょっと待ってほしい。この配置に見覚えはないだろうか。

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 くり抜いて横にすると、そう。

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 ケーシィの顔になるのだ。

 一見白バベルとケーシィは何も関連性がないように見える。が、ここで「ケーシィ」と何度も呟いてみてほしい。ケーシィ、ケーシィ、ケーシィ、ケーシィ、ケーシィ、ケーシィ、ケーシィ、ケーシィ、ケーシィ、ケーシィ、ケーシィ、ケーシィ、ケーシィ、ケーシィ、ケーシィ、ケーシィ、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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  The 9thKAC関東女子部門のエリア予選にて白バベルが選ばれたことで話題になった。なぜボタンが固い筐体でやらせる曲がよりによってこれなのかと阿鼻叫喚だったらしい。それはもうお祭り騒ぎだっただろう。ぜひ見てみたかった。なんせ私は生粋のお祭り好きである。音楽のフェスも好きだ。なお花火の音が怖いので夏祭りには行かない。

 KAC自体もまたお祭りである。白バベルの配置から導き出されたこの「お祭り」から何か紐解かなければならない気がしてきた。ポップンのお祭り曲といえば何だろうか。祭JAPAN、いや違う。夏祭り、これも違う。

 

 ドンパン節だ。

 

 

 

 

 

 

 

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 1.はじめに

 ドンパン節は、全国のお祭り好き(長門有希調で糞譜面を提案し続ける界隈とも言う)に愛される楽曲である。COOL or BADを常時付けながらEX譜面をやらされる地獄のようなスコアタが開催されたこともあって、知名度は一躍トップクラスになった。撫子ロック、ニエンテ、ドンパン節。o†o、Chaos:Q、ドンパン節。もはやポップンの顔といっても過言ではない。今回はこのドンパン節の人気の秘訣を、EX譜面を味わいながら考察していく。

 

2.譜面全体

 全体を通してズレが目立つのが特徴だ。それによりCOOL or BADとの相性を最悪にしている。上級者でもSを出すのがなかなか難しい。なぜだろうか。

 それは手作り感を醸し出すためである。ファミリーマートのシリーズ商品に「お母さん食堂」がある。ごぼうサラダや白和えなどお母さんが作っても納得な品目もあれば、おつまみかまぼこなど「それはおふくろの味じゃないスーパーで買ってきたやつだ」と突っ込みたくなる品目もあり、もはやなんでもありのシリーズとなっている。

 だがそれでも確かに"温かみ"を感じるのだ。それは何もかも「お母さん」に起因している。ラグビー部帰りのアルバイト、生きる理由はないが死ぬ勇気もないと嘆きながら作業するアルバイト、山田勝己、誰が手渡してもそれは「お母さんの手作り料理」となる。そして夜な夜なお母さん食堂を食べて想う。私は生きている。

 この通り手作り感は非常に重要なエモーショナル要素だ。ドンパン節にはドンパン節という名前があるため変えることができない。そこでさながらお母さんが手作業で配置したようなズレを配置するのだ。いや実際パートのおばさんが配置したのかもしれない。そうに違いない。ドンパン節をプレイしておばさんの給料を上げよう。その1プレイがおばさんのご飯になる。ドンパン節募金。

 

3.45小節目

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 最後に強烈なソフランが待ち受ける。ここでずっこけるのがお約束であり、よりスコア難にさせている要因である。

 ところでこのBPMの推移、気にならないだろうか。無論簡単な等差数列ではない。何を隠そうこれはドンパン節のジャンル名も絡んだ、緻密な計算の元導出されたBPMなのだ。これより導出過程を示す。

 まずジャンル名と曲名を英語とローマ字表記に直し、キリのいいところで区切る。

 

Rhythm / & Blues & / Minyou / Donpan / Bushi

 

 さらに愛を込めて"LOVE"を加える。

 

Rhythm / & Blues & / Minyou / Donpan / Bushi / LOVE

 

  そして各区間の画数を数字に変換する。

 

8 / 8 / 8 / 7 / 6 / 6

 

 以下、これを「ドンパン数字」とする。

 そして音楽的にキリのいい数字"120"を起点とし、この数字を分解する。まず①(十の位と一の位)-(百の位と十の位)という数式を立てる。

 

20-12=8

 

 これに②ドンパン数字を左から足していく。

 

8+8=16

 

  そして③キリのいい数字"100"を足すと、

 

16+100=116

 

 新たな数字が導かれた。これをドンパン数字を使い切るまで繰り返す。

 

16-11=5,5+8=13,13+100=113

13-11=2,2+8=10,10+100=110

10-11=-1,-1+7=6,6+100=106

6-10=-4,-4+6=2,2+100=102

2-10=-8,-8+6=-2,-2+100=98

 

 ここで

 

120,116,113,110,106,102,98

 

 という数列が導出された。これは40小節目のBPMと一致している。以上より、この細かなBPMは緻密な計算の元配置された代物であることが示された。おばさんは理系だったのだ。主婦の頭脳を侮ってはならない。家計簿で鍛えた計算力が、そこにある。

 

4.おわりに

 今回はドンパン節(EX)について考察した。これまで主に感覚に頼った考察を行ってきたが、このようなアプローチの考察も時には必要である。とでも思っただろうか。その安直な考えはチープシーロマンだ。まず唐突に"LOVE"を持ち出すあたりが帳尻合わせに他ならないし、このBPMは常識的に考えて生演奏独特の偶然であろう。譜面制作もパートの人間にはさせてもらえないはず。恐らくプログラマーやコンポーザーだ。無理なこじつけは慎むべきである。

 このような出鱈目に騙されてはならない。ディープシーロマンのキャラはいつだって君を狙っている。