短く読めるおすすめ漫画10選

・全て違う作者、現時点で短い(ざっくり)というレギュレーションを設けています。

・僕とたまに話す人には大体を勧めているので読まなくてもいいかもしれません。なんなら勧められた漫画を2作あれしています。教えてくれた方々ありがとうございます。

・あらすじは全部Amazonからの引用です。

・おすすめの漫画があったらtwitterで教えてください。

 

1.スペシャル / 平方イコルスン  (既刊3巻)

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出来事には意味がある。
その一挙手一投足。
授業中でもヘルメットをかぶり続けることにも。

超人的怪力の持ち主・伊賀こもろは時節を問わずにヘルメットをかぶっていた。
転校生の葉野は、伊賀の隣の席となるが、明らかに尋常ではない伊賀について誰からも説明も無く、新しい日常生活になじんでいくのであった。

ワケあり彼女とひとクセあるクラスメイトの普通じゃないのが普通の日常コメディ。
(このマンガは優しさ100%で出来ています。)

 あらすじのアクが強いですね。ここまでサブカルサブカルした印象ではないものの変な作品であることには間違いないです。設定もご覧の通りクセがあるんですが、ただそれよりも登場人物全員の視点がどこかずれているのです。だからただダラダラと喋っていてもコメディ漫画として成立してしまう。例えば消しゴムをポンと出されて、僕はまずカバー取って初めて実用的になるのよくらいしか思わないんですが、この作品もとい作家さんは「若干見下ろすと角っこにYの字浮き出るよな」から始まりワーッと話を膨らませていく、そういう調子です。余談ですがこの方は下あごを描くのがめちゃめちゃうまいです。下あごが見える表情が頻発します。そういうフェチシズムさえ感じてしまいます。


2.あの子と遊んじゃいけません / どろり  (全1巻)

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SFにちょいエロ成分を足した、どろり式ディストピアギャグをお楽しみください。まさに子どもに読ませたくない仕上がりとなっております。

 エロに期待すると痛い目を見ます。どういう特色があるのか、なぜ数多あるオムニバスギャグからわざわざ選んだのがこれなのか、総括して言ってしまうと面白くなくなってしまうので書けないです。ただ一つ言えるのはオチという概念にとてつもない執着を持っているのではないか、ということだけです。何か怨念のようなものが込められている気がしてなりません。主題を読み解こうとすることへのアンチテーゼとも取れるようないろいろがあります。でもそういうのを考えること自体もナンセンスなのかもしれませんね。勉強になりました。今度から何も考えないで読みます。

 

3.児玉まりあ文学集成 / 三島芳治  (既刊3巻)

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比喩・記号・語彙――文学の構成要素をテーマに孤高の才能が描く、静寂と浮遊感、とびきりのポップ。
詩情あふれる台詞と画面、ミステリのような叙述トリック、近いようで遠い存在である文学と漫画が、かつてないほど接近した注目作!

 文学とは、を描いた作品かと思いきや、途中から主人公のサイコぶりが猛威を振るったりラブコメになったりそこそこ忙しいです。「これ読むなら小説読めばいいじゃん」とはならず、文学的な読みをちゃんと漫画もとい画像へ変換したような、しっかりその媒体である意義があります。ある種立体的です。そしてトーンをほとんど、もしくは一切使わず、更にぎりぎりまでデフォルメしている画風が特徴です。引き算の美学を感じます。成熟期ゆらゆら帝国みたいですね。それがいい抜け感に繋がっているのです。ウエダハジメが好きな人はこっちも好きだと思います。ガシガシした感じの手癖がちょっと似てます。


4.銀河の死なない子供たちへ / 施川ユウキ  (全2巻)

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とうに人類が滅亡した星で、
ラップを口ずさむのが大好きな天真爛漫な姉・πと、
いつも読書をしている内向的な弟・マッキは、
永遠の命による終わらない日々を過ごしていた。

そんなある日、愛すべきものの終わりに直面した二人は……。

手塚治虫文化賞」受賞作家が挑む、
不死の子供たちの果てしない日常と、
途方もない探求の旅――。

 死生観について語れる人はすごいです。僕は生き死になんて案じてもむだだとすぐ投げ捨ててしまいますが、それほど死というものが怖いのでしょう。長生きすればそれだけより多くの死を受け入れなければならなくなる、だから老衰なんてごめんだくらいのことは考えていたものの、この子達くらい強くなれたらと思った次第です。

 

5.水は海に向かって流れる / 田島列島  (全3巻)

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「あの人、本当は怒りたいんじゃないの?」高校への進学を機に、叔父の家に居候することになった直達。だが最寄りの駅に迎えにきたのは見知らぬ大人の女性、榊さんだった。案内された家の住人は、親に黙って脱サラしたマンガ家(叔父)、女装の占い師、ヒゲメガネの大学教授、どこか影のある25歳OLと、いずれも曲者揃い。そこに高校1年生の直達を加えて、男女5人での一つ屋根の下、奇妙な共同生活が始まった。共同生活を送るうち、日々を淡々と過ごす25歳OLの榊さんに淡い思いを抱き始める直達だったが、彼女と自分との間には思いも寄らぬ因縁が……。少年が家族の元を離れて初めて知る、家族の「罪」。自分もその被害者なのかもしれないが、加害者でもあるような気がする。割り切れないモヤモヤした思いを抱きながら、少年は少しずつ家族を知り、大人の階段を上っていく。前作から4年の沈黙を破った田島列島が、ユーモラスかつセンシティブな独特の筆致で描くのは、家族の元を離れて始まる、家族の物語。家族の元を離れて始まる、家族の物語。高1春、曲者揃いの住人たちと男女5人の共同生活を始めた直達。彼が淡い想いを寄せる25歳OLの榊さんとの間には、思いも寄らぬ因縁が……。

 あらすじが長いですね。でもそういう漫画なので分かります。さして重要性のないネタバレをすると最終的にはラブコメっぽい終わり方をします。とにかく設定が複雑なのが特徴です。例えばあの人がこの情報を知っている、この人は知らないのようなフラグがとっても多いのです。ただよく分からなくても読み進められるだろうと個人的には思ってます。それよりノリや画風が軽くて癖になる、そして全てが回収されてきれいにまとまるあの読後感、面白いです。こんなに重いことをしているのになぜどこか余裕が感じられるのか、たぶん人生そのぐらいがちょうどいいんだと思います。やらない後悔よりやる後悔とかそういう話ではなくて、踏んだクッパマスをちょっと他人事くらいに見てしまう感覚です。そうだ今の自分に必要なのはこの田島列島イズムだ、と試験直前まで前作「子供は分かってあげない」をひたすら回していた時もありました。

 

6.三拍子の娘 / 町田ロメロ  (既刊1巻)

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私たち、親に捨てられちゃったけど、結構楽しく暮らしてます。流されやすい長女・すみ、自由気ままな次女・とら、優等生だが謎多き三女・ふじの折原三姉妹。決して完璧な3人じゃないけど、私たちには私たちのリズムがある。ワルツのように軽やかに、日々の暮らしはこんなにも、強く、楽しく、愛おしい。

 日常系と呼ばれる作品でおおむね表紙のイメージ通りです。話の流れ自体はよくあるものが多くファンタジー要素もほぼほぼないのですが、とにかく漫画らしい演出がうまいんです。これが山です、誰がなんと言おうと山ですと言わんばかりに謎のタイミングで放り込まれる大コマ、何かおっぱじまったぞと困惑する展開、急に壮大になる演出、とにかくひょうひょうとしています。この方なら僕が気象病で寝込んでいる1日もおもしろ漫画へ仕立ててくれるに違いありません。

 

7.ごっこ / 小路啓之  (全3巻)

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拉致した少女との“ごっこ”遊びの行く末は――!?

 このあらすじでは何も分からないので補足しておくと、虐待されていたとおぼしき女の子を引きこもりの男が拉致して育てるお話です。それでもよく分かりませんね。なにゆえ本作なのかというと、厳密には小路啓之という漫画家を勧めたいからなのです。ただあのハイコンテクストな掛け合い、比喩だらけのセリフはあまりにも癖が強すぎます。そこそこの読解力、分からないものをスルーする能力が必要です。本作はそんな小路啓之作品の中でも一番マイルドで読みやすいと感じているもんで、入り口にどうでしょうか、と置いてみました。とにかく変な漫画が読みたい人におすすめです。


8.月曜日の友達 / 阿部共実 (全2巻)

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みんなが少しずつ大人びてくる中学1年生。
そんな中であどけなさが抜けない女子・水谷茜。

水谷はひょんなことから「俺は超能力が使える!」と
突拍子もないことを言う同級生の男子・月野透と
校庭で会う約束をする。決まって月曜日の夜に。


大人と子供のはざまのひとときの輝きを描く、
まばゆく、胸がしめつけられるガールミーツボーイ物語。

 思春期の心情を描くのが本当に上手い方です。本作はエスカレーターの端をダンダン歩くように年を重ねているお友達がわらわらいる中、ふと立ち止まってしまった中学生を描いています。足は止まっても勝手に上ってしまうものです。大変ですね。

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 おーっとここで8切り!

9.潮が舞い子が舞い / 阿部共実  (既刊6巻)

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海辺の田舎町。高校2年生の男女が織りなす青春群像コメディ。

 阿部共実のオムニバス作品には必ず毒のある話が七味の山椒感覚で仕込まれていましたが、こちらはそんなことないです。作者独自の思考を30人超の登場人物を媒体に垂れ流すちょっと理屈っぽい漫画で、でも各々キャラが立っており人間ウォッチする楽しみもあります。味わいというか乗りは先に挙げたスペシャルに近いのですが、こちらはより普遍的な視座で「けっこうそういうこと思う人いるよね」みたいな、見て見ぬふりをしていたところへ再びスポットを当てられるニュアンスの短編が多いです。多少活字慣れしていないとしんどいかもしれません。

 

10.アトモスフィア / 西島大介  (全2巻)

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ある日、わたしの分身が現われた。わたしに何の断わりもなく、世界はわたしの居場所を奪った。それでもわたしが「ふざけんな」って言わないのは、あらかじめ、みんなを赦してるから―。

 ラストの捉え方は色々ありそうで、あの(想定しうる)主題を置きたかったのであればこのギミックは最適だったと僕は思います。それでも真面目な人には勧めてはいけないような気がしてなりません。僕にはこういう"メタ演出"(ネタバレ反転)に対してあるひねくれた見解と言うか思想と言うか、そういうのがあって、それでびっくりさせて終わり、では物足りなくなってしまったのですが、本作はその奥があってよかったです。